死を覆い隠す温泉街

別府では霊柩車を見かけることがほぼ無い。歓楽街に来た温泉客が霊柩車を目撃すると現実のもっとも鋭い事実である「死」によって一気に旅のほろ酔い気分が醒めてしまうことを考慮した原住民の暗黙の掟なのであろうか。

しかし、温泉街にも高齢化は加速度的に進行しつつある。地元民自身が死臭を放つ寸前の街を歩く屍となりつつあるのだ。もはや覆い隠された死は一気に街を飲み込もうとしているように見える。トキハが廃墟となるとき、このプロセスは終了する。